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勝手にお届するパリダカ迷車・珍車図鑑(その1)

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「ダカール…カール…ール…ル…」
PCのモニターを注視し、一心不乱にキーボードを叩いて仕事に没頭している負傷・タカハシの頭の中に、突然、声が響き渡りました。ふと顔を上げると、正面のモニター越しに、白いサファリジャケットを着た男が立っています。
「おお、“神”よ」
“パリダカの創造主”ティエリー・サビーヌ様が編集部に降臨されました…が、どうやらおすぎにもMZWにもその神々しいお姿は見えていないようです。
「“善きパリダカ人(びと)”、負傷・タカハシよ」と“神”は、なぜかアート・オブ・ノイズの『ロビンソン・クルーソー』をBGMに、故・城達也さんの声で日本語に吹き替えられてお話になりました。「まずはこれを見てみなさい」
突然、目の前のPCモニターにブラウザーが立ち上がり、とあるレース専門サイトが開きました。
「こ、これは…!!」
「大会14日目のニュースを最後に情報の更新が止まっているのです」と“神”は悲しげにおっしゃいました。「“善きパリダカ人”よ、いったい今日は何日か?」
「すでに2月も5日目を数えております。大会終了から2週間以上かと…」
「パリダカの“競技”は15日間。完走せし者に幸いあれ」どうやら“神”は途中でニュース配信が停止していることにいたくご立腹の様子です。
「しかし“神”よ。悲しいかな、我らがラリーレイドの人気はF1、WRCはおろかル・マン24時間レースやインディ500マイルの足もとにさえ遠く及びませぬゆえ、致し方ないところかと。何しろ彼らもモンテカルロラリーやらF1のストーブリーグやらで忙しいでしょうから、南米の僻地で行なう格式が思いきり底辺レベルのレースなどに構っていられるような場合ではないでしょう。おまけに選手もイマイチ有名ではありませんし、地味なことこのうえありません。何しろこの国のレース・マスコミは地味なものや砂や泥、欧州以外のものが大嫌いなのです。たとえ元・F1ドライバーが出場していようとも」
「“善きパリダカ人”よ、“レースに貴賎なし”ではないのですか?」」
「“神”よ。それがこの国のレース・マスコミには“ある”のです。F1を頂点とする厳然とした目に見えぬヒエラルキーが。地味なレースや砂や土や泥を担当させられると、とたんに泣きわめかんばかりに不機嫌になる。そういう醜悪な姿を私は何年も幾度となく見て参りました。レースの格式と自らの身分を同一化するかのような下らない見栄張り連中--この国では“ギョーカイ人(じん)”と呼びますが--に阿呆らしくなったからこそ、私は“本道”とされるものを外れ、“見渡す限りのsky、ちっぽけな自分抱きしめろ”の砂や土や泥とマイナーと第三世界諸国に殉じることに決めたのです」
「うむ…“善きパリダカ人”よ。では、あなたが皆を“正しき道”に導きなさい」
「め、滅相もございません、“神”よ…!!」
「ダカール…カール…ール…ル…」
“神”は再びアート・オブ・ノイズの『ロビンソン・クルーソー』をBGMに、故・城達也さんの声で天に還られました。
(以上、負傷・タカハシの個人的見解であり、MFiを代表するものではありません)

再び“神”からの啓示を受けてしまったので、負傷・タカハシ、これから次回のパリダカ、「ダカール2014」に向けて勝手に布教活動を行なわせていただきます。こんなことはMFi本誌では絶対にやらないので、このブログだけの独占記事ですね。え、いらない? いや、勝手に続けます。

さて、パリダカ最大の特色は「何でもアリ」という点です。
2輪、ATV、4輪自動車、トラック…。要するに「お前がこのルートを一番速く走り切れると思っているクルマなら、3輪車だろうが戦車だろうが何でも参加して良し」なのです。このあたりの精神は同じフランスの“偉大な草レース”のル・マン24時間レースと同じで、“オフロードのル・マン”などと呼ぶ人もいます。参加車両が「何でもアリ」なので、プジョーはレギュレーション変更で使えなくなったグループBマシンを投入してリサイクルできたというわけです。
また、そんな「何でもアリ」のレギュレーションなので、パリダカはさながら「迷車・珍車の走る博物館」的な様相も呈しています。
そこで「ダカール2013」の参戦車両を振り返ってみましょう。
まずは今回の優勝車、「MINI ALL4レーシング」から。

スペック
エンジン:ツインターボ直6ディーゼル(おそらくBMW M57D30T型・改)
排気量:2993cc
最高出力:229kW(307hp)/3250rpm(公表値)
最大トルク:700Nm/2100rpm(公表値)
エアリストリクター径:φ38mm
最高速度:178km/h以上(公表値)
トランスミッション:Sadev 6速シーケンシャル(前進6速、後退1速)
クラッチ:AP焼結レーシングクラッチ
デファレンシャル:Xトラック
ブレーキ:APディスク(320×32mm。フロント空冷、リヤ空冷/水冷、6ピストン)
全長×全幅×全高:4333×1998×1966mm
ホイールベース:2906mm
トレッド:1736mm
乾燥重量:1900kg
燃料タンク容量:360L以上(公表値)
シャシーフレーム:ヘゲマン・オートスポーツ
タイヤ:ミシュラン オールテレイン 245/80R16


スペックでおわかりのように、このクルマ、「MINI」と言っても市販の「MINIカントリーマン(日本名:MINIクロスオーバー)」とはエンジンどころかシャシー、ボディまで全っ然違います。
たとえば日本仕様の「MINIクーパーS クロスオーバーALL4」は全長×全幅×全高が4120×1790×1550mm、ホイールベースは2595mm、トレッドは1525mm。「MINI ALL4レーシング」の方が5%ほど大きいのです。
実はこの「MINI ALL4レーシング」はX-Raidチームが仕立てているのですが、彼らがそれ以前に使用していた「BMW X3 CC(クロスカントリー)」の外観をMINIっぽく仕立てただけのシロモノだと思えば良いでしょう。ちなみにX-RaidのオーナーはBMWの株主なのだそうです、はい。

しかしながら「BMW X3 CC」にしても「MINI ALL4レーシング」にしても、なぜか日本では「市販車の改造車がパリダカに参戦する」というようなトンチンカンな記事が目につきました。
無論、そんな記事を見かけるたびに、
んなワケねーだろ!!
と心の中でツッコミを入れていたことは言うまでもありません。市販車の改造車で総合優勝が狙えるわけがありません。

また、4駆システムである「ALL4システム」も市販車のものとは全っ然違うことも申し添えておきます。市販車とレースカーはかつてのパジェロとプロト・パジェロぐらいかけ離れた存在です。
さらに言えばWRC仕様の「MINI ジョン・クーパー・ワークスWRC」とも違っており、たとえばシフトレバーはWRC仕様ではステアリングホイールの隣に設置されていますが、「MINI ALL4レーシング」では市販車同様の位置にあります。とは言え市販車と同じなのは位置だけで、Hパターンではなくシーケンシャルシフトです。

今回の「ダカール2013」にはステファン・ペテランセル/ジャン=ポール・コトレー組の302号車、ファン“ナニ”ロマ/ミシェル・ペリン組の305号車、レオニード・ノヴィツキー/コンスタンティン・ジルトソフ組の307号車、クリジストフ・ホロウクジク/フィリペ・パルメイロ組の310号車、ボリス・ガラフリク/ジル・ピカード組の314号車、ステファン・スコット/ホルム・シュミット組の324号車の6台が参戦、5台が完走して302号車が優勝するという高い戦闘力を見せました。


車体はレーシングカーらしくカーボンファイバーを多用。平均φ50mmの鋼管を用いたロールケージは航空機製造技術を駆使して組み立てられており、一部、車体骨格と兼用。かつてのプロト・パジェロやWRCのグループBマシンに見られた、乗員区画がパイプフレームと一体化されたセミ・パイプフレーム構造だ
(写真:MINI motorsport)


スペアタイヤをいささか強引に3本も詰め込んでいるが、これは車体の重量バランスを整えるバラストとしても機能させる意味もあるのだろうと思われる。(写真:MINI motorsport)


市販車の面影など微塵もないコクピット。高くそびえたシフトレバーが特徴的。トランスミッションは6速シーケンシャルで、引くとシフトアップ、押すとシフトダウン。クラッチは市販品ベースの焼結クラッチ。(写真:MINI motorsport)



デフはフロント、センター、リヤのそれぞれにロック可能なXトラックの油冷式を装備。(写真:MINI motorsport)



サスペンションは当然ながらダブルウィッシュボーン。ショックアブソーバーは各輪2本ずつ(各軸4本ずつ)のダブル・ショックで、4段階に調整可能。おまけにクルマのロール率を変化させるロールバルブもつく。ダンパーオイルは別体の冷却器つきリザーバータンクから送られる。(写真:MINI motorsport)



ブレーキはAPのインナーベントつきスチール・ディスク。前輪は空冷、後輪は空冷と水冷の併用式。(写真:MINI motorsport)



リヤスポイラーの付け根には車内のホットエアを排出する排出口が設けられており、ダウンフォース獲得の一助としても機能するよう考えられている。(写真:MINI motorsport)



車体下面にはジャッキを内蔵。ただし砂漠のように地面が柔らかいとめり込んでしまうため、その場合は下にマースデン・マット(PSPとも言う穴の開いた金属板)や道板などを敷く必要がある。(写真:MINI motorsport)


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